広瀬香美 × Lemon (米津玄師カバー) — しぶしぶ始まった YouTube 第 1 弾と、仕掛け人の戦略

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    歌をみんなに届けたい、ただそれだけだった

    広瀬香美さんが YouTube で米津玄師さんの「Lemon」を歌ってみた、その記念すべき第 1 弾の動画です。2020 年 5 月公開。広瀬香美さんといえば「ロマンスの神様」をはじめウィンターソングの女王として知られる方ですが、この動画を入り口に YouTuber としての広瀬香美さんを初めて知った方も多いのではないでしょうか。

    この企画は、実は本人が「YouTube をやりたかった」から始まったものではないと聞いています。広瀬香美さんが歌をみんなに届けたい、それだけのために「どうすればいいか」を相談した相手のなかに、企画を動かしてくれる外部のスタッフの方がいて、その方の提案で「では YouTube を始めてみませんか」という流れになったそうです。当初は本人もしぶしぶ参加していた、というのが企画の出発点だったと聞いています。

    1 億再生の冠を借りて、普段の一面を見せる

    この企画を組み立てた仕掛け人の方には、はっきりとした信念があったそうです。それは 「普段の芸能人としての広瀬香美ではない、別の一面を見せたらバズるはずだ」 という確信。視聴者は、テレビでの仕上がった姿だけでなく、その人のもう一枚奥の顔が見たい、そのカラクリこそが伸びる、という読みです。

    そのうえで第 1 弾に米津玄師さんの「Lemon」を選んだのにも、明確な狙いがあったと言います。当時すでに 1 億再生の大台に乗っていた国民的楽曲をカバーすれば、YouTube のレコメンドアルゴリズムに乗ってもらいやすい。元動画から関連動画として表示される回数が増え、ふだん広瀬香美さんに触れていない層にも届く。「コンテンツの強さ」と「アルゴリズム上の見つかりやすさ」を同時に取りにいった 設計です。

    「※スタッフのご機嫌とり」というタイトルが意味すること

    タイトル末尾の「※スタッフのご機嫌とり」というフレーズは、文字どおりの意味です。YouTube に乗り気ではなかった広瀬香美さんに対して、企画を提案した仕掛け人スタッフが「歌ってもらった」。広瀬さん側からみれば、スタッフのご機嫌をとるつもりで歌ってあげている、というスタンスが、そのままタイトルに乗っているわけです。皮肉とも本音ともつかないギリギリの語感で書かれていて、サムネイルと並んだときに「ちょっと観てみよう」と思わせるフックにもなっています。

    観て、応援したくなる動画

    そういう企画の背景を知ったうえで観ても、知らずに観ても、たしかに広瀬香美さんの「歌をみんなに届けたい」という一心は伝わってきます。第 1 弾という肩慣らしの空気感、米津玄師さんの「Lemon」というすでに完成された名曲との向き合いかた、収録現場のラフさ。そういうものが一本の動画として束ねられていて、観ているとつい応援したくなる、そういう成立のしかたをしています。

    その後、広瀬香美さんの YouTube チャンネルは「歌ってみた」シリーズや、後ほど取り上げるドライブ企画などへと広がっていきます。出発点としての一本目を、ぜひ。

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